日本の美を、世界の美にするために…
創造力の翼を広げて、"クリエイティブな生命”を吹き込む!
株式会社 ミキモト装身具
真珠…それは貝の体内で作られる生体鉱物で、その光沢にあふれる美しさは、「人魚の涙」「月のしずく」というように、古代の人々からも珍重された宝石です。六月の誕生石でもあります。
この貴重な真珠を、世界で初めて養殖によって生み出したのが御木本幸吉その人です。みなさんも人物伝などで御木本幸吉の名前を見聞きしたことがあるかも知れません。幸吉はこの美しい真珠を、ヨーロッパの装身具技術を用いて、日本だけではなく世界に向かって、ジュエリーとして送り出しました。ミキモトパールの誕生です。ネックレス、ブローチ、髪飾りをはじめ、さまざまな美術工芸品を制作し、人々の心に感動を贈りとどけています。東京都目黒にある株式会社ミキモト装身具を訪ね、ここで働くスタッフのみなさんにお話をうかがいました。
日本の美を、世界の美にするために…
世界の女性の首を真珠で飾りたい!
世界で初めて真珠の養殖に成功した御木本幸吉。彼は、1927年にニューヨークを訪れ、発明王エジソンと出会い、真珠をプレゼントしました。エジソンは受け取りながら、こう言いました。「私の研究所で出来なかったものが2つだけあります。一つはダイアモンド、もう一つは真珠です。あなたが動物学上からは不可能とされていた真珠を発明し完成したことは、世界の驚異です」。
そして、御木本幸吉は「世界の女性の首を真珠で飾りたい」という思いを抱いていました。そして1905年(明治38年)に伊勢神宮へ明治天皇が行幸された折、拝謁した幸吉は陛下にその思いを伝えたのです。この精神を今もしっかりと受け継いでいくことが大事だと、株式会社ミキモト装身具の鈴木靖明総務人事課長はおっしゃいます。
鈴木靖明課長
「世界の女性の首を真珠で飾りたいという幸吉の思いを受け継ぎ、ベストジュエリー、ベストテクニックを追求することが会社の理念になっているんです。世界に、精神的な豊かさと心を贈り届けたいという思いがあります。社員のすべてがその創業理念を持って、ジュエリーを作り続けている…それが当社なんです。」
株式会社ミキモト装身具の従業員数は現在226名。貴金属装身具及び宝飾品の製造、卸販売を事業内容としています。関連・関係会社として、株式会社ミキモト、株式会社御木本真珠島、御木本製薬株式会社、またアメリカと中国にも関連会社があります。
株式会社ミキモト装身具では、工場、卸事業部、商品統轄部、管理統轄部の4つの部門があり、卸事業部では、百貨店や小売店への卸販売、工場では真珠製品をはじめさまざまな宝飾品の製造をおこなっています。
「卸事業部は営業セクションで、商品の販売する重要な部署です。と同時に、工場は製造のセクションで、営業企画と連携して商品を開発し、製造していきます。お客様が望まれる商品を作ることが大事なんですね。ですから当社は「ものづくり」の会社であり、技能の世界が今もずっと伝承されて来ています。素晴らしい宝飾品によって社会に貢献したいと考えています。」
業界のトップランナーとしての誇り
秋場邦彦課長
「ものづくり」を創業理念とし、美しいジュエリーによって多くの人々に感動を与えたい…そのためには日々の切磋琢磨が必要です。第二制作室の秋場邦彦課長(56)は、50年前に制作された宝飾品を見て、その技術の高さに感嘆の声を上げたとおっしゃいます。
「うちの会社がすごいところは、初期の作品のレベルの高さです。明治、大正、昭和の初期に作られた作品が修理などで届くんですが、それらを見て驚きます。ものすごい作業をしていることがひと目で分かるんです。だから、いま私たちが作っている商品が、50年後、100年後に、同じように修理のためにここに戻ってくるかも知れない。その時のことを考えると手が抜けないです。精一杯の努力をして作らなければならない。業界のトップランナーとしての誇りがありますから」
創業者・御木本幸吉は、ヨーロッパの装身具の技術を導入して、独自のデザインを考え出したわけですが、時代遅れになるということはないんですか?
「まったくありませんね。デザインも技術も古くささなどありません。ヨーロッパから技術を導入し、そこに日本の伝統的な工芸である櫛(くし)や簪(かんざし)などの技術とミックスさせました。日本独特の繊細な技術、きめ細やかさが融合しています。ずっと培われてきたものなので、時代遅れになるといったものではありません。それに真珠といえば、その繊細さが日本人に合っていると思いますよ。」
制作現場では現在は、いわゆる「逸品もの」と呼ばれる特別注文品と、量産品の製造をおこなっていて、秋場さんは量産品の原型を制作しています。
「量産品の原型を作るのが私の仕事です。原型を作ると、100個、200個という商品を作ることができる。デザイナーと打ち合わせをして、細かい仕様を決めていきます。うちの会社が得意とする真珠のついたブローチは、たくさん作ります。この場合、真珠というのは丸いので、ブローチにする場合バランスが悪くなるんですね。そこに工夫が必要なんです。見た目の美しさはもちろんですが、使う時の強度の問題、安全性の問題などに細心の注意を払わなければいけない。102年の歴史を背負っていますから、そこはきちんとしなければいけないんです。」
102年の歴史…株式会社ミキモト装身具は、2007年に創業100周年を迎えた会社です。株式会社ミキモト装身具は、このヨーロッパの装身具技術を日本に初めて導入した会社であり、真珠はもちろんのこと、ダイアモンドなどの素材を使い、アートの領域にまで高めている宝飾品加工会社です。この長い伝統と、たゆまぬ技術の研鑽が、現在のミキモト装身具のスタッフに受け継がれています。
ミキモト真珠島での出会いが入社のきっかけ
坂元絵里さん
入社3年目の坂元絵里さんが、ミキモトの真珠と出会ったのは、小学校の修学旅行で伊勢志摩へ行き、ミキモト真珠島でパールクラウンという作品を見た時だといいます。ゴージャスにして繊細、しかも特別な美しさを放つ作品のことが深く印象に残り、「いったいどんな人がこれを作ったんだろう」と思ったそうです。その後、美術系の大学に進み、金属工芸を専攻。ある日、大学にミキモト装身具に就職した先輩がやって来た時、「仕事が楽しい」と言っているのを耳にして、入社試験を受けてみようと決意したのでした。
「だけど、入社試験の時は、もうダメだと思いました。実技試験で、銅版を糸鋸で切るのがうまくいかなくて、デッサンと粘土造形では2時間の制限時間のうち、粘度に時間を掛けすぎてデッサンに30分しか掛けられなくなり、本当にもうダメだと…(笑)でも、面接のときに「やりたい!」という気持ちをしっかりと伝え、がんばりました。」
その結果、坂元さんは入社し、まず量産品の制作工程の部署に配属。現在は、秋場さんの指揮下で原型制作をおこなっています。
「デザイナーさんが描いてきたデザイン画を見て、平面のものが立体的になるとどうなるのだろうと想像します。そして金属の板やワックスを削り出して、量産物の型を作る作業をしています。迷う時というか、どういうふうに作って行こうかと考える時があります。そういう時は形を粘度で作ってみて、いろいろな角度から見たり、目を離して別のものを見たり、またその形を見て、何度も考え直します。すると、見えていなかったものが見えて来るし、自分の迷いがなくなっていきます。もちろん先輩に聞くこともあります。」
もともとアクセサリーに興味があったという坂元さんですが、この会社に入ってジュエリーを間近で見るようになり、その美しさに感動したといいます。
「ジュエリーよりアクセサリーに興味があったのは、高価なジュエリーは遠い存在ということもありました。でも近くでジュエリーを見ると、細部にまで手を入れていることに驚きと感動を受けました。そして今はそれを作れている事に幸せと喜びを感じています。私は今、量産物の原型を作っていますが、「逸品もの」という高額商品があります。この「逸品もの」の完成品を見た時、〈いったいどういうふうに作られているの!?〉と思いました。全然分からなかったんです。見た人に作り方がわからないものを作ってこそ一流だと思います。ジュエリーは、真剣に作らなければいけないものです。作る情熱があること、それがあれば先輩達もしっかり指導してくれます。」
これから坂元さんは、どのような心構えでジュエリーをはじめ、宝飾品を作っていくのかを尋ねてみました。
「そうですね、その作品を誰が見てもきれいだな〜と思うのは難しいと思うんです。たとえば10人の人がいたら、4人以上が〈すごいなあ〉と思ってもらえるような、そんなジュエリーを作ることができる人になりたいと思っています。自分のセンスをその作品のどこかに入れて、私でしかできないような何か、それができればいいなと思っていますね。この人に頼めば大丈夫!と思われるような人にならなければいけないんだと思います。」
今の坂元さんには迷いはありません。
基本は、ものづくり。それが原動力です!
朝田夏樹さん
入社3年目の朝田夏樹さん(24)は、3DのCADで、平面のデザイン画を立体化していく仕事をしています。CAD作業では、画面上の見た目と形になったものの見た目とで想像と違ってくる部分があるといいます。
画面上での感覚と手に持ったときの感覚のすり合わせが難しいそうです。
「高校時代から美術に関連のある進路に進みたいと思い始めました。短大で2年間金属工芸を学んでいくうちに『ものづくりの仕事に就きたい。その中でもジュエリーを作る仕事ができればいいな』と漠然とですが思うようになりました。卒業の時期になりジュエリー制作の就職先を探しました。でも、ミキモトの名前は知らなかったんです。求人情報で知ったんです(笑)」
もともとジュエリーに興味をいだいていて、自分で作ったり、アクセサリーの店を覗いたりしていたという朝田さん。そこには何より、美しいものに対するあこがれと、それを自分で作りたいというクリエイティブな思いがあったようです。
「基本的に、ものづくり好きです。どうすればきれいになるのか、いろいろ考えながら作っている時が楽しいです。だけど、きれいなだけでいいかといえばそうではなくて、身に付けるものですから、強度や安全性も考えなければいけない。
この会社に入って、さまざまな作業工程を見て、技術的なことも少しずつ分かってきました。入社当時と比べると、よりいいものが作れるようになってきたという実感があります。まだ3年目なので、これからもいろいろ学ぶ機会があると思っています。」
社内の雰囲気は、とても自由。勉強しようと思えばいくらでもでき、先輩達も協力してくれるので、ものづくりにも励むことができる環境があるという朝田さん。今後、素晴らしい製品を作り出していくことでしょう。
手作業が好きな人、発想力の豊かな人を求めています
株式会社ミキモト装身具では、まず何より製品を作ることが原点。技能職であることが大切です。
そして、卸事業部では発想力豊かな人を求めています。総務人事課の鈴木課長は、
「まず、ものづくりが好きであることが第一条件ですね。手作業が好きな人です。」
そして、制作現場の秋場さんは、
「たとえば彫刻を勉強した人などはどうだろう…と思っています。彫刻は立体なので、もしジュエリーの制作などをした場合、どういうふうな立体表現をするのかなと思いますね。もちろん、ものづくりに興味のある人で、発想力ゆたかな人であれば、ぜひ一緒にやりたいですね。」
そして、卸事業部での営業に関しては……
鈴木「営業職に関していえば、やはりこちらも発想力のある人を求めます。企画力と言い換えてもいいですが、これまでの販売ルートだけでやっていくのではなく、ビジネスチャンスを見つけて、当社が作る商品が、これまでと違った形で流通ルートに乗っていく。そういう営業職ならではの新しい発想を持った人を求めます。営業の幅を広げていくような力を持った人ですね。きっと今後ますます拡大化していく可能性があるので、やりがいはあると思います。」
「ベストジュエリー、ベストテクニックを追求し、美への出会いを通じて、豊かな生活文化に貢献する」という企業理念を持つ株式会社ミキモト装身具。アーティスティックなセンスと、ものづくりへのこだわり、そして企画力・発想力ゆたかな人材を求めています。あなたがもし、このどこかにひらめきを感じたなら、まずホームページをしっかりと読んでみてほしいと思います。
http://www.mikimoto-jf.co.jp/index.htm
〈コラム1〉
技術部の秋場さんは、東京マイスターに選ばれている技術者です。
東京マイスターというのは、都内に勤務する技能者のうち、極めて優れた技能を持ち、他の技能者の模範と認められる方々のこと。東京都優秀技能者として知事が認定しています。中小企業における技能者の育成等を図るとともに、広く社会一般に技能尊重の気風を浸透させ、技能者の社会的地位及び技能水準の向上を図ることを目的として、毎年、表彰を実施しています。
〈コラム2〉
ある時、技能グランプリ大会の会場に旋盤やフライス盤を使う若い技術者が見学に来て、貴金属装身具製作工程の中の手作業でヤスリをかけたり削ったりしている様子を見て、「こういう業種の仕事があったんですか!」と驚きの声を上げたそうです。機械であろうが、手作業であろうが、そこにあるのは「ものづくり」という点。若者に、もっとこうしたさまざまな業種の仕事があることを分かってほしいと、スタッフは思っています。