アルミ加工技術を活かし、テレビ番組でも放映されたアイデア商品を生み出す
自社製品の開発から、依頼された試作品の製作、量産品の製造まで。アルミ加工技術を基盤として、幅広く事業を展開
三力工業株式会社
捕り物に使う“さすまた”やインナーマッスルを鍛えるトレーニング器具など、さまざまなアイデア商品を開発・製造している企業が大田区にある。同社の製品はユニークでテレビ番組などでも何度か取り上げられているが、基盤となっているのは加工が難しいアルミを扱う技術。目に見えない内部の機構なども自社で設計し、未来のヒット商品を生み出そうと鋭意取り組んでいる。
アルミ加工技術を基盤とし、自社製品の開発など、幅広く事業を展開
代表取締役 入澤 英明 さん

1928年創業の三力工業株式会社は、自動車部品の製作から事業を開始。その後、窓ガラス昇降機をはじめとする4種類の実用新案権を取得するなど、着実にその技術力を磨いてきた。
顧客から個別に相談を受けて新製品の試作をすることもあれば、自社製品を開発することもあり、量産品の製造を手掛けることだってある。非常に幅広く事業を展開している同社だが、時代に合った製品を開発することが一つの指針。例えば終戦後には、劇場用映画用フィルム容器の製造に着手した。戦後から復興して映画を楽しむ余裕が生まれてくる中、映画フィルム容器のシェアで全国トップに輝いたこともある。
「現在、当社はアルミ加工を得意分野にしています。アルミ加工を専門にして、製品自体を製造している企業はそんなに多くありません。アルミは特殊な金属で、加工が難しいものですから。そんな中でも当社はさまざまな種類のアルミ加工に長けていまして、削ったり、プレスをしたり、板金したりすることなども得意です」と同社代表取締役の入澤英明氏は胸を張る。
とはいえ、同社の技術はアルミ加工だけではない。「製品開発をする時には、ナイロンやテフロンといった樹脂、鉄やステンレスといった金属を使いながら製品開発をしています。例えば、カメラの三脚で考えますと、脚はアルミ製で、留め金は樹脂製、ストッパーはゴムでできています。他品種の素材を融合させて製品を作り上げるわけですから、アルミ加工専門とはいえ、さまざまな素材の知識も自然と身に付けることになります」と入澤氏は説明している。
例として挙げられたカメラの三脚は他社ブランドの製品を三力工業が製造したものだが、ほかにもガードマンや公共で使用されている特殊警棒「ダイハードX」や、不審者を捕まえるために使う“さすまた”の「キャプターX」、さらにインナーマッスルを鍛えることができるトレーニング器具「エクリプス・アームツイスタ」など、自社ブランドで開発・製造している製品も数多い。アイデアに溢れ、内部に仕掛けのある製品が多いのも同社の特徴と言えるだろう。
「あまり人目には触れない部分ですが、内部の機構を開発することも当社の得意分野。内部の機構を開発するためには、樹脂やゴムなど、何でも使えないと上手く作れません。ゴムやプラスチックは仕入れていますが、それ以外のところはすべて自社で開発・製造するようにしていますから、ほとんど何でも対応できるようになっています」(入澤氏)
一点物でも引き受ける試作・開発の東京本社。量産を受け持つ日光工場
三力工業は、東京本社で試作と開発を担当し、日光の工場で量産を受け持っている。東京本社では顧客から受けた注文なら、手間の掛かる一点物の製作であっても快諾。顧客から好評を博している。
自社製品の開発も、東京本社の管轄。社員同士で話し合いながらアイデアを出して、設計内容を詰めていく。
「製品は形にしてみないと分からないことが多いのです。例えば最近開発した『エクリプス・アームツイスタ』は、インナーマッスルを鍛えるように設計しています。科学的な実証データに基づく画期的な製品で、首都大学東京の新田教授に協力をいただいて開発しました。
ですが、試作を重ねて今の形にするまで、部品のすべり具合やスプリングの強度を試行錯誤する必要がありました」(入澤氏)
技能を持った技術者、技術を持った技能者になってほしい
アルミ加工の技術を活かしながら、モノづくりの最前線に身を置いてきた入澤氏。同氏は、これからモノづくりの世界に飛び込んでこようとしている学生に向けて、次のようなエールを送っている。
「モノづくりの基本は、技能を持った技術者、あるいは技術を持った技能者になるということです。
技能とは現場で培われてきた職人の技、技術とは学問として受け継がれてきたものです。製品を実際に作るのは技能で、『こういう表面にするためには、どうやって加工すれば良いのか』という問いに対して答えを導き出すのが技術です。これからのモノづくりには、技能と技術を両方持っている必要があると思いますね。
若い方には、柔軟な発想と誠意を持ってモノづくりの仕事に取り組んでもらいたいものです。研究と努力を怠らないで、勇気を持って新技術の開発に取り組めるような技術者になってください」(入澤氏)
先輩メッセージ
デザイナー、カメラマン、大学教授、インストラクター、たくさんの仲間と協議を重ねながら、アームツイスタを開発
石井さん
営業部 主任
石井さん
――転職してこられたそうですが、三力工業ではどのような業務に就かれているのですか?
三力工業に入る前は5年ほど製造業の会社に勤めていまして、フライス加工を扱っていました。また2年ほど営業の経験も積んでから当社に転職してきました。
当社では主に営業の業務に就いています。フライス加工の経験もありましたし、図面を読むこともできましたから、営業として活動しやすかったですね。
営業の仕事の流れは、お客様から「こんな製品ができないか」というざっくりとした希望を伺いまして、開発担当者に伝え、実際の形にしながら、できる限りお客様の希望どおりの形になるよう努めていきます。
思い描いていたことを形にできて、お客様に喜んでいただけることが何よりの喜びです。それを励みに仕事に取り組んでいます。
――これまでのお仕事の中で、特に印象に残っているものは?
当社のオリジナル商品として売り出している「アームツイスタ」を開発したことですね。
元々は、スポーツ用品のデザインをしている方から、インナーマッスルを鍛えるトレーニング器具の共同開発の話があったことがキッカケで、インストラクター、大学教授、カメラマン等、自分の知人や弊社の開発仲間と一緒に、「ここはアルミにして」「ここは木が良い」「こうすれば高級感が出るよね」と細かいところまで打ち合わせながら進めました。アルミ表面に関しても「ここの形状はもっとなめらかにしよう」「表面処理はキズに強くするために、もっと硬くしよう」と協議を重ねました。非常に手間が掛かった商品ですが、その分だけ愛着を感じています。
――働いていて魅力を感じる点を教えてください。
中小企業と言えば、部品単体を製造しているところが多いイメージがあるかもしれませんが、当社はすべての部品を自社で製造し、組み立てて商品化するところまでできます。企画・開発・製造と一貫しているところが面白いと思いますね。
さらに、自分が製造から商品化までかかわった製品を街中で見かけるとうれしいです。達成感を実感できます。
芸大の先生の依頼を受けて製作したターンテーブルが高く評価され、うれしかった
田中さん
開発部
田中さん
――担当されている業務内容を教えてください。
開発業務を見ています。お客様から「こんなものが製作できないか」とご相談を受けて試作・製造をすることもあれば、独自の自社商品を開発することもあります。今は自社商品の開発が多くなっています。
当社の場合、まずは試作して形を作ってしまいます。そこからどう変えればいいか、試作品を見ながら考えていきます。図面を描くこともありますが、すぐに加工から入ることが多いのです。
――三力工業に入社された決め手は何だったのでしょうか。
大学を卒業してそのまま三力工業に入社しました。三力工業を知っていた先輩から紹介されたことがきっかけでした。
大学の産業機械工学科で工作機械に触れる機会がありまして、加工にすごく興味を持っていたのです。大企業で働いていると、どうしても開発の仕事は図面を描くことだけになってしまいます。ですが、当社でしたら現場で加工するところにも携わることができます。そこが魅力でしたね。
――技術はどのように覚えたのですか?
私の上司は72歳の技術者の方です。それだけ経験豊富な方が優しく教えてくださいますので、貴重な経験だと感じています。
――これまで経験された中で、印象深いお仕事は?
芸術大学の先生から依頼を受けたことがあります。マウスを裏に張り付けたターンテーブルを製作しました。形になるとデザイン性が高く、見た目も斬新でしたから、大変面白かったですね。
完成した時には、芸大の先生から「こういうものがほしかった」と高く評価いただけました。そのことが何よりもうれしく、記憶に残っています。