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成功企業紹介

株式会社メトロール

仕事で関わる人はハッピーにしたい!社員も、お客様も、満足度NO.1

立川市高松町にある株式会社メトロール本社5階。緑豊かな昭和公園にほど近い、多摩都市モノレール高松駅からすぐのところにある
立川市高松町にある株式会社メトロール本社5階。緑豊かな昭和公園にほど近い、多摩都市モノレール高松駅からすぐのところにある

JR立川駅からモノレールに乗り換え、高松駅を降りて、すぐのところにメトロール本社はある。
コンピュータ制御の工作機械や半導体製造装置が、高い性能を発揮するのに必要な「精密位置決めスイッチ」を世界で初めて開発し、その分野では世界シェアトップを誇る。

このオンリーワン企業を率いる松橋卓司社長の企業ポリシーとは、そして、国内で製造を行っているにも関わらず、円高不況をものともせずに、世界に向けて快進撃を続けるメトロールとは、一体どんな会社なのか?

他社のモノマネをしない製品開発

私たちの身近にある自動車や家電製品、携帯電話やスマートフォンなどは、金型でプレスされた成型部品や、削りだされた切削部品などで構成されている。たとえば1台の自動車は2万点から3万点の多様な部品で構成されているという。これらの部品や金型を削り出す機械が、マザーマシンと呼ばれる、CNC工作機械である。

メトロールの「精密位置決めスイッチ」は、このCNC工作機械の工具位置をコントロールするのに、重要なパーツとして採用されている。CADで書かれた図面の構図を、工作機械のコンピュータがX・Y・Z軸を割り出し、自動的に刃物で工作物を加工していくように指示していく。

ところが作業時間と共に、工具を取り付けている軸が回転の熱により膨張したり、工具が磨耗するなどし、ズレが生じてくる。このズレを定期的に検知し、工作機械にフィードバックすることで、精度の高い加工を実現する。そのための制御装置が、メトロールの「精密位置決めスイッチ」だ。

一般的に、スイッチ(センサー)は磁気や光を用いて、モノの存在を感知する「電気式(非接触)」と、メカニカル構造の「精密機械式(接触式)」とがあるが、メトロールの製品は後者にあたる。

工作機内は、油や金属切粉が飛び散る悪環境で、電気式のスイッチでは不具合を生じやすくなる。 一方、メトロールの「精密機械式のスイッチ」は、アンプを使用しないメカ構造のため、温度変化に強く、金属粉の混じった切削油をかぶっても狂いが生じる心配がない。

過酷な条件下で300万回使用しても、生じる誤差はわずか1,000分の1ミリ、極めて高い精度を誇る。世界中の工場で稼働している40万台以上のCNC工作機械に、採用されていることからも、その高い信頼性のほどが伺える。

メトロールは、電気式が当たり前の制御業界で、世界で初めて、機械式の「精密位置決めスイッチ」を世に出して以来30年間、技術を磨き、オリジナリティが高く、高精度な工業用スイッチの新製品を次々と生み出し、世界に普及させた、オンリーワン企業というのが最大の強みだ。

工具の位置をコントロールするために、CNC工作機械に取り付けられた、精密位置決めスイッチ。白い液体は摩擦熱を抑え、切削くずを取り除くための切削油。
工具の位置をコントロールするために、CNC工作機械に取り付けられた、精密位置決めスイッチ。
白い液体は摩擦熱を抑え、切削くずを取り除くための切削油

しかし、順風満帆に見えるメトロールにも逆風が吹いた時期があった。2001年9月11日に起きた米国同時多発テロの影響で、工作機械の輸出がストップしたため、同社の業績は大きく落ち込んでしまった。この危機を乗り越えられたのは、松橋卓司社長の発想の転換と決断にあった。

当社の「精密位置決めスイッチ」が求められている分野は工作機械だけではなく、産業機械に広くあるはずだと考え、新製品の開発に着手し、半導体製造装置、医療機器など、さまざまな業界で精度を求められる高性能な機械に徹底した売込みを行ったのだ。

同社は2008年に第6回「勇気ある経営大賞」の優秀賞を受賞。この賞は、東京商工会議所が主催し、革新的、創造的な技術・技能やアイデア、経営手法により、独自性のある製品やサービスを生み出している企業を顕彰することを目的としている。
2008年「勇気ある経営大賞」優秀賞、東京商工会議所、2012「IT経営力大賞」経済産業大臣賞
創造的な製品開発と国際性、ITを駆使した経営手法に、公的機関からも高い評価を受けている

その成功例が、エレベーターのディスクブレーキパッド用精密位置決めスイッチだ。エレベーターは0.3mm程度、パッドの微小動作で、ブレーキがかかる仕組みになっている。

このわずかな微小動作を、メトロールの極小スイッチを採用したことで、正確かつ確実に検知できるようになり、ブレーキの小形化を実現した。さらに最近では、スマートフォンのディスプレイ部に使われる強化ガラスを、規格サイズに短時間でカッティングする際の刃物の位置決め装置としても採用されている。

その他、自動車の組立てラインからロボットや印刷機械に至るまで、メトロールの製品は広範囲の産業機械に採用され、現在同社が製造するスイッチの、ラインナップ数は約700種類に及ぶという。

一人一人 社員の創造的本能を解き放て!楽しくなければ、仕事じゃない!

会社や社員について、熱く語る松橋卓司社長
会社や社員について、熱く語る松橋卓司社長

松橋社長の1日は、日本、中国やインドの支社のブログを読むことから始まる。このブログは全社員が見ることができ、会社を取り巻く外の環境で、どんなビジネスチャンスや問題が発生しているか、社内の全員が情報共有できるようになっている。

また、メトロールの工場、事務棟のフロアーは、製造、業務、営業、マーケティング、そして設計・開発の部門は、仕切りのないオープンスペース、壁があるのは応接室と更衣室とトイレだけ。

「社長室のドアはいつも開いている」という表現があるが、そもそも、当社には、社長室が存在しない(笑) 情報を取りに世界中の現場へ、動き回わる社長に、部屋は必要ないんですよ。

仕切りの無いフラットな社内は、社員同士の積極的な交流が促進され、情報共有もしやすくなる。
仕切りの無いフラットな社内は、社員同士の積極的な交流が促進され、情報共有もしやすくなる

「職場はオーケストラのようなもの。優秀な楽団員が、上からの命令やルールで動くのではなく、自律的に、各自の楽器でハーモニーを奏でようとするからこそ、美しく感動的で素晴らしい演奏が実現する。社長の仕事は、社員の採用と、プロジェクトの責任者を任命することぐらい、あとは、能力を発揮できるように環境を整備して、社員に任せるだけ。プロジェクトが失敗した時は、全部社長の責任 勝負は時の運!担当者は忘れるのが仕事と言っています(笑)」

「会社のミッションと自分の生きがいをクロスオーバーできる人は、自発的にどんどん連携しながら、しっかりと任務を果たしてくれます。 会議は情報共有する為のモノではなく、いい製品を創るために、アイデアを出し合う融合、創造の場となっています、敬語は禁止、発言権に、年齢、肩書き、経験は一切関係ありません。自分の生き様を仕事にぶつけ、自分の成長を会社の成長と、捉えられる社員との仕事は本当に楽しい」(松橋社長)

普段、松橋社長はジーンズに作業ジャンパーでノーネクタイ。社内を歩き回って、コーヒーを立ち飲みしながら、いつも、リラックスした雰囲気で、社員と打ち合わせをすることもしばしば。

偉ぶったところは微塵も感じられない。「社長も会社の機能の一部にすぎない、社員は自己実現するために仕事をするべきだ!上司も会社も、実はそれを実現する為の手段に過ぎない」と言い切る人だ。

「運命共同体、私は仕事を通して、関わった人と幸せを共有したいと考えています。人生の大半の時間、家族と過ごすよりも長い時間、仕事で一緒に過ごす仲間を愛せなかったら、『生きがい』がないではありませんか。社員が自分の強みを発揮して、協力し合い、連続的なイノベーションを起こしていくことが大切だと思っています」
『縁』ある人との『絆』を大切にしたい。よく『同じ釜の飯を食べた仲間』といいますが、共通の善を前提とした、前近代的な日本的経営に近いといえるかもしれませんね(笑)

しかし、中国やインド、海外で仕事をして分かったのですが、出世やコミッション的な金で報われるのではなく、前近代的な日本的経営に共鳴し、入社し、長期にわたって活躍している外国籍の社員もいるんですョ 縁も絆もやる気も、数値評価できない見えないモノ それこそが大切にすべきもの、日本人の強みの源泉であるような気がします」(松橋社長)

「インターネットなどで直接ユーザーと繋がっていることが大きな喜び」と語る、マーケティング部 営業支援課長。
「インターネットなどで直接ユーザーと繋がっていることが大きな喜び」と語る、マーケティング部 営業支援課長

このオープンな会社の姿、トップの人柄を見て、メトロールに入社を決めた社員は少なくない。 マーケティング部営業支援課のマーケティング部 営業支援課長もその1人だ。 2006年の3月に入社。それ以前はデザイン関連の会社に勤めていた。

「会社も社長個人にも、大変エネルギッシュな雰囲気を感じました。加えて精神的に自立した社員が、任された仕事を、縦割りでやりきることで、決断と実行が実にスピーディー、自信を持って仕事をしています。

自己実現のために転職してきた人が多いので、働く人の受容性が高く、中途入社の私を、一緒に働く仲間として、すぐに受入れてくれました」

営業支援課長は外部の会社に頼ることなく、同社の製品カタログを自社内で制作。さらに同社のホームページやブログ、フェイスブックの作成にも実力を発揮した。

「ブログやフェイスブックなどのSNSを通じて、日本国内ばかりか、海外のユーザーとも繋がっていることは大きな喜びです。当社では常時、直接国内外20,000人のエンジニアに向けて情報を発信しています。ユーザーからはリアルタイムで『こんなスイッチはできないだろうか?』といった相談や、『こんな新製品が欲しかった!』という感謝の声が入ってきます。

いち早く手がけた、海外ダイレクト販売サイトや、世界に向けた情報発信・ブログを使った社内情報共有、少量多品短納期を実現した生産管理システムが評価されて、「中小企業IT経営力大賞2012」経済産業大臣賞大賞を受賞。応募企業180社(件)の中から、栄えある賞に輝いた。
いち早く手がけた、海外ダイレクト販売サイトや、世界に向けた情報発信・ブログを使った社内情報共有、少量多品・短納期を実現した生産管理システムが評価され、「中小企業IT経営力大賞2012」経済産業大臣賞大賞を受賞。全国応募企業180社の中から、栄えある賞に輝いた

得てして工業製品や部品は、販売先の顔が見えないのが一般的ですが、当社はまったく違います。ユーザーの声は、新しい製品開発のヒントにもなりますし、モノづくりに携わる者としての励みにもなっています」(営業支援課長)

同社は製品の販売方法も実にユニークだ。国内はもちろん、世界60カ国以上の地域ユーザーから、直接インターネットなどを通して注文を取り、製品は工場から直送している。決済は円建ての前払いか、クレジットカード、PayPalによる電子決済。世界中どこへでも7日以内に配送ができ、直接ユーザーと繋がり、レスポンスも抜群。スピーディーで臨機応変な対応が、製品の独自性と相まってこの会社をさらに強くしているのだ。インターネットでのダイレクト販売をきっかけに、中国 上海 深セン、印度バンガロール、台湾 台中に販売拠点を構え、5カ国の販売子会社の社員が海外販売に貢献している(IT活用と国際性が評価され、2012「IT経営力大賞」大賞 経済産業大臣賞を受賞した)

少量多品種 高付加価値なら世界最強、日本の誇り高き、「モノづくり集団」

別の棟にある生産工場内の照明は明るく、環境音楽がバックに流れ、足元は床暖房、体と心に優しい職場環境だ。1日椅子に座って、細かい製品の組立作業を行う女性社員が、仕事に集中しやすいように、疲れないように、細心の配慮がなされている。

床暖房が設置されている工場内部。
床暖房が設置されている工場内部

メトロールの標準的なスイッチ1台は、約20点のオリジナル部品で構成されており、全部品は自社で設計して作られる。部品の総点数は7,000点以上にのぼり、その組合わせで、約700種類の製品が作られている。流れ作業による分業は行わず、一人一人が、製品を責任を持って完成させる、「一個流し」と言われる製造方法を採用している。

作られる製品はすべてが精密機械だけに細心の注意と集中力が要求される。組立てにあたっては、かなりの熟練を要するのではないかと思われたが、「当社では、手順通りに組み立てていけば、誰でも精度の高い製品が作れるような仕組みを確立しています」(営業支援課長)

オリジナルの治具を使って製品を組み立てる大倉さん。
工場内には7,000点以上の精密部品がストックされている

品質に関わる重要な工程は、必ず治具(製品を組み立てる道具)を製作し、それを使えば、作業の標準化が確実に守られるというわけだ。これにより製品のバラつきが無くなるだけでなく、販売による品目の変動を、治具を交換するだけで、一人の人間が複数の製品を創ることができる多能工化、フレキシブルライン化をも実現した。

さらに、自分の組立て作業で、作りにくいところ、間違いやすいところ、など、気がついたことや改善提案を工場内に置かれた「気づき用紙」に書いて提出する。

そこに書かれた問題点や提案は、翌朝、責任者が検討し、改善の対策が講じられる。この自由でスピーディーな問題解決の社内雰囲気が、ルーチンワークに陥りがちな生産現場を、責任感があふれる、活き活きと活気づいたものにしている。

ものづくりの楽しさ、醍醐味を語る製品部・内野部長。
ものづくりの楽しさ、醍醐味を語る製品部長

工場のフロントラインを担当する、製品部長はこう語る。 「私達の強みは、多品種小ロットの製品を確実かつスピーディーに、全世界のユーザーへ、短納期でお届けすることができる仕組みづくりが確立されていることです。そして、それ以上に大切なことは、ここで働くパート社員も含め、全社員が自分の仕事に自信と誇りを持っていることです。 ユーザーの抱える問題を解決するために、世界に先駆けた新製品を生み出せることは、何よりの喜びであり、モノづくりの醍醐味です。この喜びを共有できる若者を、もっと育てていきたいし、そんな仲間を増やしたいですね」(製品部長)

担当する製品は、自分の作品でもある。自身が手がけた製品の横にサインする社員。
担当する製品は、自分の作品でもある。自身が手がけた製品の横にサインする社員

工場内には、製品の一つひとつがポスターとして掲出されているが、よく見るとその製品の横に、担当者の名前が、自筆で書きこまれている。

「自分の作った製品は、我が子のようにカワイイ」と言って、担当者が、書き込んでいるのだ。 製品に愛着を感じ、自己の仕事に対する誇りと自負を表明するためのサインなのだ。

日本の優れたモノづくりは、まさに、この一人ひとりが持つ製品への深い愛情と、気高く誇り高い人の連鎖によって成り立っている。