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根本特殊化学株式会社(株式会社ネモト・ルミマテリアル)

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暗闇でも長時間輝き続ける夜光塗料で世界シェアトップを誇る

根本特殊化学はこんな会社

寝室の照明を落としてみよう。枕元の目覚まし時計は、ほのかに光っていないだろうか。暗闇で時計の文字盤から出てくる光。その光を生み出しているのが夜光塗料だ。

根本特殊化学は夜光塗料で世界シェア約8割を誇るトップ企業。国内の時計に使われている夜光塗料は、ほぼ100%が根本特殊化学の作ったもの。時計以外にも非常口へ誘導する標識、リモコンのキーパッド、消防車の放水ホース、航空機内などにも夜光塗料は使用されている。

東日本大震災や阪神大震災、アメリカ同時多発テロ事件、トンネル内の事故や地下鉄火災などの不幸な災害・事故が起きるたびに、不測の事態にあらかじめ備えておくことの重要性が叫ばれてきた。夜光塗料の活用先として注目されているのが、まさにその領域。夜光塗料を使った広域避難場所標識・津波避難場所標識などを広めることで、夜間に大規模停電が起こっても避難場所への道順がはっきり分かるように備えておこうという気運がこれまでになく高まっている。

そのように社会から必要とされ、貢献できる「Safety」「Security」「Health」という3つの領域の事業を伸ばしていく。それが根本特殊化学の事業方針だ。

技術Tips – 夜光塗料はなぜ光る?

夜光塗料はなぜ暗闇で光るのだろうか。それは硫化亜鉛やアルミン酸ストロンチウムなどの物質が備える“蓄光(燐光)”という性質に原因がある。

X線・紫外線・可視光線などを照射すると、物質内の電子がエネルギーを受け取り、高エネルギー状態になる。これを“励起”と言うのだが、この状態は非常に不安定。電子は元の安定した低エネルギー状態に戻ろうとする。そして戻る際に、吸収したエネルギーを電磁波として放出。それが光として目に映るのだ。

普段から使っている蛍光ペンで引いた線が光って見えるのは、そうして起こる発光現象によるもの。しかし、蛍光ペンの線は暗闇で光り続けない。“蛍光”と“蓄光”はどこが違うのだろうか。

詳しく説明すると、“蛍光は外部のエネルギーを受けているときにだけ発光する現象で蛍光ペンの場合は、可視光線で励起して発光している。”蓄光“は励起した電子が物質内にある複数の深さの違う井戸(トラップ)に捕獲されそれが徐々に元に戻りながらエネルギーを放出するので時間がかかってしまう。その分、発光現象が長時間にわたって継続。暗闇でも光り続けて見えるのだ。

技術Tips – ルミノーバ以前に放射性物質が使われていた理由

昔の夜光塗料には、ラジウムやプロメチウムなどの放射性物質が普通に含まれていた。それが1980年代後半になると放射能が人体に悪影響を与えることが危惧されるようになり、根本特殊化学は大手取引先との契約が打ち切られる瀬戸際にまで追い込まれることになる。

その危機を乗り越えて開発されたのが「N夜光(ルミノーバ)」。しかし、なぜルミノーバが開発されるまで、夜光塗料には放射性物資が含まれていたのだろうか。

前述の夜光塗料が光る仕組みを思い出してもらいたい。暗闇で光るためには、光るよりも先に物質内の電子がエネルギーを受け取る必要がある。ところがルミノーバ以前の夜光塗料は蓄えられるエネルギーの量が少なく、数十分くらいしか光が保たなかった。そこで放射性物質を混ぜた“自発光性”の夜光塗料を作り、放射性物質から放射されるエネルギーを継続的に吸収させて、光る時間を延ばそうと考えたわけだ。

会社Tips – 初の海外拠点はアメリカでも中国でもなくポルトガル

根本特殊化学は1990年代からグローバル展開を進め、現在は海外売上が全体の半分以上を占める。

それほど早くから海外に進出していったのには理由がある。国内だけで夜光塗料を販売していても必要とされる量に限りがあり、すぐに成長の限界が訪れてしまうことが明らかだったからだ。しかし、たとえ必要とされる量がそう多くはない夜光塗料でも、全世界で必要とされる量を足し合わせていけば、事業をまだまだ拡大できると考えた。

グローバル展開と言えば、人件費が安くてたくさんの人口を抱える中国や東南アジア、先進国のアメリカなどにまず進出する企業が多い中、根本特殊化学は最初の海外工場をポルトガルに建設した。

ポルトガルはヨーロッパ諸国の中では人件費が安く、気候は日本に似ていて暮らしやすい。ヨーロッパとは陸続きで、大西洋を挟んでアメリカにも輸出しやすい立地。農業国のため、産業振興の目的で化学系メーカーの誘致に積極的だったため、最初の拠点の建設地に選ばれたのだ。

現在はポルトガル以外にも、オランダ、スイス、中国、韓国に販売会社や工場を設立。根本特殊化学に勤めていると海外勤務する機会も少なくないため、海外工場を見学する海外研修制度や社内で開かれる英会話スクールなど、英語習得を支援する体制も整えられている。

会社Tips – 世界最高峰の技術を守る知財戦略

世界進出を早くから進めてきた分、海外企業に簡単にまねされないよう、自社技術を守る知的財産戦略にも力を入れてきた。

中小企業の中には日本国内だけでの特許取得で手一杯な企業も多いのだが、根本特殊化学はN夜光(ルミノーバ)の開発時、世界17カ国で特許を申請。外部から知財に詳しい弁理士を招いて知財管理の体制を強化し、知財を守るための組織のあり方を考え、取り組むべき課題に一つずつ取り組んできた。

特許申請時に留意したのは、「特許で保護される範囲が広めになるように主張しておくこと」「まねされた時に特許違反である証拠を提出しやすいようにしておくこと」「材料に関する特許はしっかり守るが、顧客企業がやりにくくならないよう、加工技術や応用範囲については顧客が自由に使える用途を明示しておくこと」の3点。ヨーロッパや中国など、各地で特許をめぐるトラブルはあったが、この戦略は上手く機能している。

そして、特許で自社技術を守ることと同様に重視しているのは、新技術を開発していくことだ。特許で技術が保護される期間は20年。ルミノーバよりももっと長く、さらに明るく光る次世代の夜光塗料を開発するために2006年、平塚に技術開発センターを新設した。根本特殊化学がこれから迎える次の20年~30年を支える技術が、近いうちにきっと生まれてくることだろう。