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成功企業紹介

株式会社鬼塚硝子

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「サイエンスと匠の技の融合」で5面一体成形の血液検査用ガラスセルを創造

鬼塚硝子はこんな会社

大人になると、健康診断の中に血液検査が含まれてくる。病院などで採取された血液は遠心分離機によって、赤血球などの血球と上澄みの血清に分離。検査したい項目別に専用の試薬を主に血清と混ぜ、光を当てて成分を調べる分光分析に掛けられることになる。

分光分析の時、血液を入れておくガラスの容器(ガラスセル)を作っているのが鬼塚硝子。国内シェアで言うと、おおよそ70%を同社が占めている。

「光を当てて成分を調べる」ため、ガラスに極小さな異物が混ざっていたり、わずかな歪みがあったりするだけでも、正しい数値を測ることはできない。従って、極めて高い精度の加工技術が求められ、かつ毎月何万個も製造する技術がなければ需要に供給が追いつかない。同社は双方を両立できている希有な企業なのだ。

血液検査用のガラスセル以外にも、理化学用のガラス機器、炭酸ガスレーザー装置なども手掛けている。光ファイバーなどで使われる石英キャピラリ(毛細管)を、厚さ3.5マイクロ(100万分の1)メートルと超極薄で作り出すことにも成功した。そうした数ある製品の中でも、同社が現在、最も力を入れている製品が電界放出型X線管。レントゲン撮影に使われるX線を発生させる装置で、従来品よりも大幅な小型化・省電力化を実現した。世界初の快挙として大いに注目を集めている。

技術Tips – 5面一体成形で製造する血液検査用ガラスセル

鬼塚硝子の血液検査用ガラスセルは、底面と壁面の5面で構成され、角柱のような形状になっている。試験管のような円柱状よりも、角柱状の形の方が垂直方向から光を当てられるため、計測がやりやすいという利点がある。

ただ、高い精度で角柱状にガラスを形作るのは容易なことではない。同社ではまず円筒状のガラスを規定の長さで切り、同時に片側だけをふさいで試験管のような形にする。続いては、その中に角柱状の金型(中型)を差し込み、真空成形機の中に移す。真空成形機内でガラスを熱し、角柱状の中型の内側を真空に近づけていくとガラスが引き寄せられて中型に吸着。5面一体のまま成形できる。

不良を出さずに一連の加工を成し遂げるためには、工程ごとにさまざまな課題を乗り越えていかねばならない。失敗を繰り返しながらも同社が蓄えてきたノウハウは相当なもの。ほかの企業にはまねできず、同社にしか量産できない製品となっている。

技術Tips – 分光分析で血液の成分を分析できる原理

血液が赤く見えるのは、体積で言うと血液中の4~5割ほどを赤血球が占めているからだ。赤血球に光を当てると青や緑といった色の波長の光を吸収。赤い色の波長の光を反射することから、人間の目には血液が赤く見える。

このように、物質ごとに吸収・反射する光の波長は決まっている。そうした「光を当てた時に生じる物質ごとの反応」に注目して物質の成分を調べるのが分光分析だ。

ただ、血液とりんごが人間の目には同じような赤色に見えるように、そのまま光を当てるだけでは見分けにくい成分もある。そこで血液検査では、特定の物質に反応して色を発する試薬を混ぜ、検査がしやすくなるように工夫している。

技術Tips – なぜ鬼塚硝子が炭酸ガスレーザー装置を開発したのか

鬼塚硝子の特徴として、製品の加工に必要な加工装置を自分たちで作っている点が挙げられる。炭酸ガスレーザー装置もそうした自作加工装置の一つ。二酸化炭素を使って赤外線レーザーを増幅し、高出力のレーザーを当てることで加工や溶接に使用されている。また赤外線は水に吸収されやすく、メスを使うよりも痛み・出血を伴わずに施術できるため、美容外科などでの手術用レーザーメスといった用途もある。

通常のレーザーなら、水やガラスといった透明な素材では、そのまま透過したり反射されたりしてしまう。レーザーが吸収されないと溶断する等の加工ができないため、加工用には使えない。しかし、前述のように赤外線には水やガラスなどの透明な素材にも吸収されやすいという特徴があるため、ガラスやアクリルなどの加工にも適している。また、前述の超極薄のキャピラリを作り出す工程においても、炭酸ガスレーザー装置が重要な役割を果たしている。

会社Tips – サイエンスと匠の技の融合

鬼塚硝子の企業理念は「サイエンスと匠の技の融合」。以前から同社の持つ高度なガラス加工に関する「匠の技」は研究者から高く評価され、「サイエンス」の知識を持つ研究者からの依頼を受けてさまざまな製品を作り出してきた。

同社の強みは、対応の早さ。研究者から設計図が届いたら、その日のうちに試作品を作ってみて、上手く行かなかったら「匠」の意見を設計図に反映。修正したら、また翌日には試作品を作る。そうした繰り返しの末に、血液検査用ガラスセルなどが生まれてきた。

少し前には社内に部署として「研究室」を新設。工学博士の学位を持つ社員を室長に任じた。研究室では電界放出型X線管や、ガラスと異種材料の接合技術、ガラス上での電気回路形成技術など、最先端の技術研究を進めているが、ここでも「匠の技」と「サイエンス」の関係性は変わらない。まだまだ現役の「匠」として一線で活躍する社長に、研究室室長が依頼して製品開発を進めるという一風変わった流儀で仕事が進められている。

会社Tips – 社長が死んでも死なない会社を目指す

鬼塚好弘社長が鬼塚硝子を創業したのは、1967年のこと。50年近く経っている現在、後継者の育成が大きな課題となっている。

人材を育てるため、同社で重視されているのは、毎日1ミリメートルでもいいから「階段を上る」ことだ。世の中は毎日どんどん変化しているから、自分が立ち止まるとその分だけ取り残されてしまう。ほんの少しずつでも毎日前に進むことが大切であって、それさえできれば、滝のように困難な課題に直面しても、1ミリを積み重ねて行くことで、いつかは登り切ることができるという信念なのだ。